その1・マカーム
アラブ音楽はマカーム音楽
西洋音楽とは違う、聴きどころ
余談ですが
マカームはいくつある?
理論家は整理好き
マカームはジンスで出来ているのだ
代表的なジンス
マカームの性格
中立音程はアラブ音楽の醍醐味
中立音程はデリケート
微妙な音程、どう区別する?
アラブ平均律といふこと
代表的なマカーム
アラブ音楽はマカーム音楽
アラブ音楽の旋法(モード)のことをアラビア語で《マカーム》といいます。
ついでに言うと、旋法の体系をマカームの複数形で《マカーマート》といいます。
アラブ音楽は、この「マカーム」の上に成り立つ音楽なので、「マカーム音楽」とも呼ぶことが出来ます。すべてのアラブ楽曲はマカーム理論によって作曲され、後で述べるタクスィーム(即興演奏)という形式は、マカームにおける演奏者の教養、センスを披露する場でもあります。では、マカームってなんでしょうか?
まあこれは音階のようなもの、と言ってもよいのですが、もちろんそれだけじゃわざわざここで取り上げる意味がないので、これからちょっと詳しい話をしたいと思います。マカームのことを旋法、あるいはモードといっても何等さしつかえはありませんが、音楽のジャンルによっては細かいところに定義の違いが出てくると思われるので、ここはもっぱらアラブ音楽における旋法ということで、「マカーム」と呼ぶことにします。
西洋音楽とは違う、聴きどころ
アラブ音楽はたくさんのマカームを使いこなして、多彩な旋律を作ります。アラブ音楽には、西洋音楽にあるような機能和声が存在しないため、西洋音楽の耳からすると、なんだかメロディだけ聴かされる音楽のように思う人も少なくありません。しかし旋法理論の観点から見れば、西洋音楽には長調と短調のたった二つの旋法しかない、ということになります。もちろん西洋音楽は和声に意味付けられ、彩られることによって多くのヴァリエーションを生み出しています。いくつかの和音の展開で聴かせるのが西洋音楽なら、アラブ音楽はマカームの展開で聴かせる音楽、と言ってもいいでしょう。要は聴きどころが違うんですね。
余談ですが
昔の西洋歴史学の世界では、故意にアラブの影響を無視する傾向がありました。まあその気持ち、わからなくもないけど。今日では古代ギリシャの文化は、いったんアラブに受け継がれ、その後解釈、展開、発展させたのちにヨーロッパに伝えられた、という正しい理解がなされるようになりました。つまりある時期において、長い間アラブはヨーロッパのよき教師だったわけです。
音楽史においても例外ではなく、教会旋法などはアラブのマカームから多大な影響を受けた、と見ることが出来ます。どっちにしても以後、あのゴージャスな和声の世界が出来上がるまでは、西洋音楽も旋法音楽の要素が支配的だったはず。ということは、旋法の持っている語法の大部分は、和声が代理を務めていると考えるのが妥当でしょう。そのぶん和声音楽のメロディーはさっぱりしちゃってるもんね。そこらへんのことは、大変興味深いことなので、そのうち大々的に取り上げてみたいと思います。
ということで、話はマカームに戻ります。
マカームはいくつある?
マカームの洒脱な転調は、アラブ音楽の醍醐味のひとつです。
ではマカームは何種類くらいあるのかというと、これははっきりは答えられないものがあります。普段私たちが経験的に知っていて実際の演奏で使うのは、多くてせいぜい40種類くらいですが、資料的に数えていけば、150種類以上はあるでしょう。人によっては組み合わせの可能性として無数にある、と言う人もいます。また、マカームは個人によって発明、開発されたりもするものですが、なかなか一般化、普遍化されるまでには至らないようです。実際に使われているマカームは、伝統的なものがほとんどです。地域によっても似たようなマカームがたくさん存在するし、これらをどう分類するかは、常々音楽学者の悩みの種になっています。
理論家は整理好き
一般に、理論家や研究者は合理化、単純化を目指し、かたや演奏家たちは経験主義的に捉えるため、学者の分類に納得しない傾向があります。端的に言ってしまえば、演奏家の経験上からいえば、どんなに似たようなマカームでも、かならず違ったものとして把握していて、実際の演奏の中でその違いが現れるものなんですが、その違いが必ずしも確実なものではないため、分類学上めんどくさい中途半端な存在になってしまっている、ということだといえるのではないでしょうか。
マカームはジンスで出来ているのだ
今日、マカームは便宜上1オクターヴで提示されることが普通です。しかし、実際は1オクターヴ半から2オクターヴの中でそれぞれのマカームが特徴を持っています。これは、2オクターヴを基本に成り立つ古代ギリシャ旋法から来ていると見られています。そして、ギリシャ旋法がテトラコルド、ペンタコルドといった4つや5つの音のつながりが基本になっているように、アラブ音楽にも「ジンス」という単位があります。
代表的なジンス
ジンスはマカームにおけるトリコルド、テトラコルド、ペンタコルドなど旋法の最小セグメントの総称で、これらが2つか3つ組み合わされることでひとつのマカームになります。
では代表的なジンスを挙げてみましょう。
臨時記号
は後述する「中立音程」を示します。なお、アラビア語のカタカナ表記はいろいろあるので、とりあえずはふだん使ってるものを採用しました。
- ラスト 《Do-Re-Mi
-Fa》
基本のジンス。トニックはDo、Mi
はバヤティのそれより高め。
- ナハワンド 《Do-Re-Mi
-Fa》
トニックはDo、西洋音楽の短調と比較できる。
- バヤティ 《Re-Mi
-Fa-Sol》
トニックはRe、Mi
は低め。下行形のジンス。
- サバ 《Re-Mi
-Fa-Sol
》
トニックはRe、Mi
は低め。
- クルディ 《Re-Mi
-Fa-Sol》
トニックはRe、Mi
は低め。下行形。
- ヒジャーズ 《Re-Mi
-Fa#-Sol》
トニックはRe、Mi
は高め。これをヒジャーズのMi
と言う。Fa#はちょい低め。
- スィカ 《Mi
-Fa-Sol》
トニックはMi
で、ラストよりもちょい高め。
- ジハルカ 《Fa-Sol-La-Si
》
トニックはFa、Si
はちょい低め。西洋音楽の長調と比較できる。
- ナワサル 《Do-Re-Mi
-Fa#-Sol》
トニックはDo
マカームの性格
マカームはこれらのジンスの持つ性格によっていて、さらにその組み合わせから発展した特徴を持つに至ります。それらの特徴をいくつかあげれは、音階、トニックの位置、上行、下行などの旋律の動き方、導音の有無、近親調の体系、装飾、導入部、終止形、それらを含む代表的なメロディ・タイプ、そして雰囲気があります。
もともと、これもギリシャ旋法のエートス論から来ていると考えられますが、マカームにはそれぞれにふさわしい気分が存在します。
例えばテレビドラマがあると、主人公がはつらつと登場してくるシーンでは、ラスト、アジャム、ナハワンドなんかがよくBGMに使われ、一方サバは人が死ぬシーンなどで使われたりします。クルディは闘争心を掻き立て、バヤティは心を平穏に保つ、と言った具合です。
もちろんそういったことが音楽を支配しているわけではありませんし、実際には勢いの良いバヤティだとか、いろいろです。作曲家が「ここは喜びのマカームで」とかいって作曲しているとは限らない、ということです。
でも、以前に私が「ルンガ・ブスタニカル」と言う曲を作曲したところ、これがルンガという、とても調子の良いリズム形式の上にブスタニカルというサバの親戚のなかなか神妙なマカーム、と言う組み合わせだったため、意表を突いた組み合わせ、ととられたこともあります。
まあ、西洋音楽では長調は明るく愉しく、短調は暗く悲しい、といった二元的な感情がありますが、それがもっといろいろになったもの、と考えていただければわかりやすいかと思います。ちなみに短調と比較されるナハワンドは、とくに悲しい感じとは受けとめられていません。
中立音程はアラブ音楽の醍醐味
マカームというか、アラブ音楽を特徴づけるものに前述の「中立音程」があり、これは半音の半分に位置する音程です。ただしこれは、インド音楽のラーガのように、音が移動する経過で表現されるものではなく、それぞれの微分音程に音階のひとつの役割を持たせたものです。それはマカームの上では、たいてい三度、六度、七度に位置しており、なぜかというと前述のジンスを見ていだだければわかるとおり、基本的にジンスの三度に位置しているからです。例えばバヤティ・ナワ(Sol調)がラストの上に乗れば、これは六度のところに中立音程が来るというわけです。
「ピアノの鍵盤で出ないような音程なんて、中途半端で気持ち悪いのでは」という先入観を持つ人もいるかも知れませんが、これがピタッと決まれば、逆に気持ちいい音なんです。中立音程もアラブ音楽の醍醐味のひとつですね。
中立音程はデリケート
さらに、この中立音程はマカームによって高低があり、アラブ音楽では少なくとも「ほとんど上の音」「高め」「ちょい高め」「ちょい低め」「低め」「ほとんど下の音」くらいは常に使います。じゃ、なにが基準なのかというと、これが西洋音楽の平均律とは違うため、ちょっと話がややこしいです。音律論についてはいずれ別項をもうけてお話しする予定ですので、しばらくお待ちください。
微妙な音程、どう区別する?
ところで「そんなに微妙な差が出せるのか」と言われそうですが、誤解を恐れず言うと、言語の発音の違いと似ているということですね。
例えばフランス語には鼻母音も入れると16の母音がありますが、各々の発音は絶対的な音を持ってるわけではありません。そりゃそうですよね、話し言葉の発音は一人一人、また状況によって違うんですからね。ではどうしてその違いが人に伝わって別の単語に聞こえるのでしょうか。それは話す人が自分で判っていて、使い分けているからです。
つまり、アラブ音楽の音程も自分の中で明確に言語化されていて、ちゃんと使い分けていれば、とりあえずは何をやっているのか、わかるんです。言うまでもなく上級者ほど、より正確で安定した使い分けが出来るわけですが、これだって毎回測定したような同じ音程になるわけではありません。許容範囲の中で若干の上下があるのが常でしょう。でもその差はちょっとですよ。
アラブ平均律ということ
ちなみに「平均律じゃない」と言っておきながら、舌の根の乾かぬうちに、ですが、近年西洋音楽の影響で、特にポピュラー音楽の世界で「アラブ平均律」のような考え方も定着しているようです。これはピアノ、アコーディオン、エレキギター、電子キーボード、などの導入に伴い和音も積極的に付加するようになったのが大きな原因と見られます。この「アラブ平均律」は、元を正せば19世紀半ばに発案され、1932年エジブト「カイロ会議」(これについては別項で準備する予定)で大きく取り上げられたもので、これは明らかに西洋文化に迎合したものだと思われます。この場合は中立音程は四分音ひとつ、ということになっており、非常に味気ないもので、私のようにクラシックをまじめにやってる徒弟からすれば、とても納得できるものではありません。たしかに四分音チューニングのアコーディオンや、GEM(イタリアの楽器メーカーGeneralmusic社)などマカームがプリセットされた電子キーボードを弾くと、そう気分悪くなるものでもなく、この際細かいこと言わなくてもいいか、みたいな気になったりもしますが。ただし、当の若い「平均律ミュージシャン」たちも実際に都合の悪いときは、もっと細かく使い分けているようです。
代表的なマカーム
ここで代表的なマカームを挙げてみます。ここでも便宜上トニックから初めて1オクターヴで表記します。ほんとはもっと上下があると思ってください。(Si
)のような表記は、上行下行で違う場合です。ここで「トルコのマカーム」と言っているのは、オスマントルコで付け加えられたマカームで、今日アラブのマカームとして通用しているものですので、現在のトルコのものとは若干異なります。なお記載の順番はまだ整理してません。臨時記号
についてはここを参照してください。
- ラスト 《Do-Re-Mi
-Fa-Sol-La-Si
(Si
)-Do》
マカームの基本。第一ジンスはラスト《Do-Re-Mi
-Fa》、第二ジンスにラスト・ナワ(Sol調)《Sol-La-Si
-Do》。この形はギリシャ旋法の全音階と同じです。Mi
はちょい高め。下行でナハワンド・ナワ《Sol-La-Si
-Do》。
- ラスト・マフール 《Do-Re-Mi
-Fa-Sol-La-Si(Si
)-Do》
トルコのマカーム。ジンス構成はラストと同じ。ほとんど西洋音楽の長調です。Mi
はエジプト楽派ではラストより高め、LaとSiを高めます。トルコでは純正率の長三度です。
- ラスト・スーズナク 《Do-Re-Mi
-Fa-Sol-La
-Si-Do》
トルコのマカーム。ラストの第二ジンスがヒジャーズ・ナワ《Sol-La
-Si-Do》。Mi
はラストより高め。
- デルニシン 《Do-Re-Mi
-Fa-Sol-La-Si
-Do-Re
》
これは正確にはラストの中でサバ・ホセイニ(La調)《La-Si
-Do-Re
》のジンスが用いられるというもの。下部ジンスの記載はあまり意味がないかも知れませんね。
- ナハワンド 《Do-Re-Mi
-Fa-Sol-La
-Si(Si
)-Do》
第一ジンスにナハワンド、第二ジンスにヒジャーズ・ナワ(厳密にはSiは導音なのでヒジャーズと言うべきでないかも)、下行でクルディ・ナワ《Sol-La
-Si
-Do》。西洋音楽の短調と比較できます。
- バヤティ 《Re-Mi
-Fa-Sol-La-Si
(Si
)-Do-Re》
第一ジンスにバヤティ《Re-Mi
-Fa-Sol》、第二ジンスにラスト・ナワ《Sol-La-Si
-Do-Re》、下行でナハワンド・ナワ《Sol-La-Si
-Do-Re》、下行のSi
は低め。Mi
はラストより低め。
- バヤティ・シュリ 《Re-Mi
-Fa-Sol-La
-Si-Do-Re》
カルジハルとも。バヤティの第二ジンスがヒジャーズ、ただしLa
はヒジャーズのそれよりも低めです。
- ホセイニ 《Re-Mi
-Fa-Sol-La-Si
-Do-Re》
トルコのマカーム。バヤティと違って、ジンスの切り替えがLaにあるのが特徴。ジハルカ《Fa-Sol-La-Si
》も内包。
- ウシャーク 《Re-Mi-Fa-Sol-La-Si
-Do-Re》
トルコのマカーム。Miは純正率の三度。エジブトでは第一ジンスはナハワンドと同じ。ちなみにRe調のジンス・ナハワンドをウシャーク、Sol調はブサレックと呼ぶことも。
- サバ 《Re-Mi
-Fa-Sol
-La-Si
-Do-Re
》
第一ジンスにサバ《Re-Mi
-Fa-Sol
》、第二ジンスにヒジャーズFa《Fa-Sol
-La-Si
》、第三ジンスにヒジャーズ・カルダン(上のDo調)《Do-Re
-Mi-Fa》。
- サバ・クルディ 《Re-Mi
-Fa-Sol
-La-Si
-Do-Re
》
サバの第一ジンスがクルディ《Re-Mi
-Fa》になったもの。
- クルディ 《Re-Mi
-Fa-Sol-La-Si
-Do-Re》
第一ジンスにクルディ《Re-Mi
-Fa-Sol》、第二ジンスにナハワンド《Sol-La-Si
-Do-Re》。ギリシャ旋法のドリア(教会旋法のフリギア)と比較できます。
- ヒジャーズカル 《Do-Re
-Mi-Fa-Sol-La
-Si-Do》
第一ジンス《Do-Re
-Mi-Fa》第二ジンス《Sol-La
-Si-Do》ともヒジャーズ。
- ヒジャーズカル・クルディ 《Do-Re
-Mi
-Fa-Sol-La
-Si
-Do》
Doから始まるクルディ。クルディとの違いは「実践的差異」といっていいでしょう。
- アサル・クルディ 《Do-Re
-Mi
-Fa#-Sol-La
-Si-Do》
ナワサルの第一ジンスがクルディになったもの。
- ヒジャーズ 《Re-Mi
-Fa#-Sol-La-Si
(Si
)-Do-Re》
第一ジンスにヒジャーズ《Re-Mi
-Fa#-Sol》、第二ジンスにラスト《Sol-La-Si
-Do-Re》、下行でナハワンド《Sol-La-Si
-Do-Re》。M
がちょい高めで、これを「ヒジャーズのMi
」と言います。Fa#はちょい低め。
- シャーナーズ 《Re-Mi
-Fa#-Sol-La-Si
-Do#-Re》
トルコのマカーム。ヒジャーズカルの一種。第三ジンスがナハワンド《Re-Mi-Fa》に切り替わったりする。Si
が高め。
- スィカ 《Mi
-Fa-Sol-La-Si
(Si
)-Do-Re-Mi
》
第一ジンスにスィカ《Mi
-Fa-Sol》、第二ジンスにラスト《Sol-La-Si
-Do》、第三ジンスにカルダン(上のラスト)《Do-Re-Mi
》、下行にナハワンド・ナワ《Do-Si
-La-Sol》またはバヤティ・ナワ《Do-Si
-La
-Sol》。
- スィカ・フザム 《Mi
-Fa-Sol-La
(La
)-Si(Si
)-Do-Re-Mi
》
これもトルコで作られたとされている。スィカの第二ジンスがヒジャーズになったもの。第三ジンスはナハワンド《Do-Re-Mi
》にも。
- イラク 《Si
-Do-Re-Mi
-Fa-Sol-La-Si
》
スィカの一種。第一ジンスにスィカ・イラク(Si
調)《Si
-Do-Re》、第二ジンスにバヤティ《Re-Mi
-Fa-Sol》、第三ジンスにラスト《Sol-La-Si
》
- ラハト・アル・アルワーハ 《Si
-Do-Re-Mi
-Fa#-Sol-La-Si
》
フザムの一種。イラクの第二ジンスがヒジャーズになったもの。
- ブスタニカル 《Si
-Do-Re-Mi
-Fa-Sol
-La-Si
》
サバの第一ジンスの下にスィカが付いたもの。
- ジハルカ 《Fa-Sol-La-Si
-Do-Re-Mi-Fa》
第一ジンス《Fa-Sol-La-Si
》、第二ジンス《Do-Re-Mi-Fa》ともにジハルカ。Si
は低め。西洋音楽の長調と比較できる。
- ザンクーラ 《Do-Re
-Mi-Fa-Sol-La-Si
-Do》
第一ジンスにヒジャーズ《Do-Re
-Mi-Fa》、第二ジンスにジハルカ。
- アジャム・ウシャイラーン 《Si
-Do-Re-Mi
-Fa-Sol-La-Si
》
ジハルカの一種。ナハワンド《Sol-La-Si
》を内包。
- シャウカ・アフザ 《Si
-Do-Re-Mi
-Fa-Sol
-La-Si
》
アジャム・ウシャイラーンの第二ジンスがヒジャーズになったもの。
- ナワサル 《Do-Re-Mi
-Fa#-Sol-La
-Si-Do》
第一ジンスにナワサル《Do-Re-Mi
-Fa#-Sol》、第二ジンスにヒジャーズ《Sol-La
-Si-Do》。
- ニクリーズ 《Do-Re-Mi
-Fa#-Sol-La-Si
-Do》
ナワサルの第二ジンスがナハワンド《Sol-La-Si
-Do》になったもの。トルコのニクリーズはMi
がとても高い。
- シュダラバン 《Sol-La
-Si-Do-Re-Mi
-Fa#-Sol》
トルコのマカーム。ヒジャーズカルの一種。
- ファラハファザ 《Sol-La-Si
-Do-Re-Mi
-Fa-Sol》
トルコの複合マカーム。西洋音楽の短調と比較できるが、このマカームは多くのジンスを一定の手順で切り替えるのが特徴。アジャム、クルディ、ナハワンド、ヒジャーズ、バヤティ、スルタン・イエカ、シュダラバンなどを内包。
- イエカ 《Sol-La-Si
-Do-Re-Mi(Mi
)-Fa#*(Fa)-Sol》
トルコのマカーム。ラストの一種。Si
は高め。
- スルタン・イエカ 《Sol-La-Si
-Do-Re-Mi
-Fa#-Sol》
トルコのマカーム。ナハワンドの一種。
チュニジアのマカーム
ここでは代表的なチュニジアのマカームをご紹介します。ここでも便宜上トニックから初めて1オクターヴで表記します。ほんとはもっと上下があると思ってください。(Si
)のような表記は、上行下行で違う場合です。臨時記号
についてはここを参照してください。
- ラスド・エッディル 《Do-Re-Mi
-Fa#-Sol-La-Si
(Si
)-Do》
オリエンタル・マカームのニクリーズによく似たモード(第一のモード)と、ラストに比較されるモード(第二のモード)が切り替えて使われます。第一のモードでは、第一ジンスはMi
がとても高いニクリーズ《Do-Re-Mi
-Fa#-Sol》、第二ジンスにナハワンドSol《Sol-La-Si
-Do》またはヒジャーズSol《Sol-La
-Si-Do》。
以下は今後の執筆予定です。(竹間ジュン)
その1・マカームのつづき(内容を充実させる予定)
その2・タクスィーム(即興演奏)
その3・イーカー(リズム理論)
その4・楽式論
その5・音律論
アラブ音楽のことを本でお知りになりたい方は、サラーフ・マハディ著『アラブ音楽』(松田嘉子訳・パストラル出版)をお読み下さい。